心理学はこういう学問  (ライター 加護宏明)




黙って座ればぴたりと当たる!
熟練した心理学者なら、ぱっと見られただけで、心の中まで分かってしまう!
こんなイメージを一般の方は抱いてらっしゃるかと思いますが、いかがでしょうか?

熟練したカウンセラー・セラピストなら、ある程度そういった側面もありますが、
確実に100パーセント見ただけで分かる、というセラピストはこの世におりません。
それではちょっと貴方が受けられる、学ばれる前に、
心理学とはどういうものか、少し整理しておきましょう。


(このようなことができればとても便利ですし、ラスベガスなどでも大もうけできてしまいそうですが(笑))



1心理学は仮説の学問 反証の困難性

 科学的研究であれば、物理的証拠が生じます。数学の世界でも、計算間違いをしなければ、誰が行っても同じ解答に行きつきます。これらの学問は、確たる証拠の元に、証明が行われる学問であり、仮に間違いがあったとしても、誰かがそれに気づき、いずれそれは間違いであると、いつしか証明してくれます。科学の研究では、客観的な物理的証拠が力を持ちます。
では、心理学ではどうでしょうか?
例えば貴方がご家族や、奥さんや恋人を愛してらっしゃるとして、それを口に出すことももちろんできるでしょう。
しかしではそれを、『客観的なデータにしますから、物理的証拠として提示してください』と言われると、
とたんに難しくなります。
脳内の電流などから、正確に感情というものを測定できる科学的装置が開発されれば別ですが、
現時点の科学では、人間の複雑きわまりない『きもち』の部分を物理的なデータとして、そのまま証明することは不可能です。
ましてや、気持ちというもの自体、まだなんだか科学的にはしっかりとした分析、正体がつかめておりません。
心理学において誰もが確実と認めざるを得ないような物理的な証拠の掲示、およびそれによって導き出される、証明は不可能なのです。
よって現在の心理学はつまり、
その考え方が『もっとも妥当であろう』と、誰かが考えた物がベースになっています。
真実に近いであろう仮説の妥当性を高めるため、学会などでは学者たちが何人も集まり、
意見が交わされます。



2心理学は確率論

元が仮説の学問ですから、こういう行動をとった人は、こういう心理状態に『絶対に100パーセントある』とは、
言い切ることが出来ません。
(たまにこれを言い切る、かわったカウンセラーもいるかも知れませんが(苦笑))
心理学という学問から考えれば、
こういう行動をとった人は、こういう心理状態にある「可能性が高い(そう考えるのが妥当だろうと、現在の心理学では考えられている)」だろうということです。


3まだまだ論議中

常に、その理論の妥当性などをめぐり、
議論を続けなくてはならない学問です。
妥当性を高めるため、たくさんの人の話し合いも必要ですし、
またそれを実践してデータをもちよるのには、時間経過も必要です。
心理学が始まったのは、実は割りと最近で、19世紀後半の、ことです。
それまで、気持ちを学問しようなんて、思わなかったわけですね。
(あるいは世界が豊かになってきたからか?)
まだ歴史も浅く、まだまだ発展途上にある学問です。



4とはいえ全く分からないわけではない

とはいえ、もちろん全く分からないわけでもありません。
ある小学生の男の子が、女の子の前で『顔を赤らめてもじもじしている』としましょう。
この男の子の心理状態、貴方はどう、分析しますか?

一例ですが、以下にいくつか可能性があります。

1、その女の子が好き
2、トイレに行きたい
3、恥ずかしがりや
4、対人恐怖症

などなど。
このままでは可能性を絞ることができませんが、
ここに例えば、

A、もじもじするのはその女の子限定。他の女の子にはならない。
B、男の子とは元気に遊ぶ子
C、初対面の大人でも、わりと物怖じせずしゃべる子供。
D、トイレは5分前に行ったばかり

などが加わるとどうでしょう?
とたんに、「たぶんその女の子が好きなんだろうな」という、「1」可能性が高まってきます。
もちろん他にも、その女の子に対して怒っているとか、他の可能性もありますが、
心理学者はこの他の可能性を考えられなければなりません。

心理学を学んだ人は、自己の主観を交えず、こういった客観的考えのもとで、
確率的に考えていくトレーニングを積んだ方達です。
(シャーロックホームズみたいですねー)

ですので、たくさん情報があるほど、つまりカウンセリングを長時間行うほど、
単純にはたくさん情報が集まるわけですから、
真のクライアントが抱えている原因や問題など、
時間をかけるほど高い確率で把握できるようになるのです。
こういったクライアントの持つ情報は、もちろん友人関係など一般の方にも、
しゃべっているうちに伝わってはいるはずですが、どうしてもなれてない一般の方は、
判断する段階などで自己の人生観とか、感情など、
本来クライアントとは関係のないはずの事柄、相当の「主観」が混ざってしまい、
なかなか高い確率で把握、とはいきません。

ここが、心理学を学んだ方と、
一般の方の大きな違いでもあり、
カウンセラーや心理学者を訪ねるためのメリットでもありましょう。






☆つまり心理学・カウンセリング・セラピーには何が必要か?

上記より、カウンセリング等を進めるためには、受けられる方自身のご協力、
フィードバックなどが必要です。
なぜなら、いくら優れたカウンセラーであろうとも、直接クライアントの心理内面をのぞけるわけでは
ないのですから、結局は確率論なわけです。つまり、カウンセラーの予測が外れることもあります。
(むしろ外れなければ怖いですね(笑))

心理学は、だまって座ればぴたりとあたる!という超常現象ではないのです。
(ただし、確率の高い心理状態は掲示できますので、
 連続で当たる場合は、超能力者に見えるかもしれませんね)

カウンセリングやセラピーを受けられる方は、ぜひ違うところは違うと、カウンセラーにフィードバックして頂きたいのです。
そうしないと、カウンセラー側も状況を正確に把握することが出来ません。
通常のカウンセラーであれば、違うなら違うという情報を、何らかの形で掲示して欲しいと
考えています。
心理学は確率論であることを、知っているからです。

カウンセラーは神様ではありません。
予測は出来ても、確定はできません。
本当のこたえは、受けられる方自身の中にしかありません。


そうやって、受けられる方と共同作業の中で、受けれる方は(自然な話の中で)状況を掲示したり
カウンセラーの補助の中、最終的には、受けられる方自身が
自分で自己の中を探っていくことができるのです。